mikemoke blog

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【読書まとめ】思考の整理学

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

以前に色々と知識を詰め込もうとしていた時期があり、詰め込んだ割にはパフォーマンスが伸びないなぁと悩んでいました。そもそも知識を詰め込むやり方が正しいのかも自信がなくなっていた時に、一つの答えを提示してくれるこの本を読みました。

内容ですが、詰め込み型の問題点と、忘れながら学習し発想を促す方法論について記載されています。主張にエビデンスが不足しているように感じましたが、自身の経験で腑におちることと、以前に読んだ著者の"乱読のセレンディピティ"が面白かったことから、抵抗感なく受け入れられることが多かったです。

1. 知識詰め込みの問題点

教育現場においても「忘れてはいけない」と教えられ、忘れたと言っては叱られる。テレビにおいても、何にも役に立たないような雑学を持っている人がクイズ番組で優勝し持て囃される。頭の優秀さは、記憶力の優秀さと同様に扱われるようなっており、”忘れる”こととに対して恐怖心を抱きやすい環境になっています。

1.1. コンピューターの普及

著者はコンピューターの普及により、人間は知識の倉庫としてではなく、創造的であることが求められるようになってきているとしています。

1.2. 知識の飽和状態に陥る

知識を詰め込見続け一定の限度を越すと飽和状態に達する、新たに知識を取り込もうとしても、流出してしまう。また知識の取り込みで満足してしまうため、問題そのものに対する好奇心が薄れてきて知識欲・好奇心が低下してしまいます。

1.3. 情報元の影響を強く受けてしまう

情報源をそのまま全て蓄積すると、情報源の考え方をそのまま継承してしまう恐れがあります。新たな発見を生み出す事を目的として学習をしている場合、考え方まで全てコピーしてしまうと新たな発想は生まれません。そもそも間違った情報である可能性すらあります。情報源とは程よい距離を取ることが推奨されます。

2. 創造的であるための"忘れる"思考方法

忘れることを許容することで、自身が関心を持つ知識が重点的に蓄積され、個性と新たなアイデアが磨かれる。また、発明やセレンディピティといったものも、問題を忘れたときに思いつくものだそうです。

2.1. 記憶した後、しばらく記憶を放置する・寝かせることで新たなアイデアが生まれる

頭にインプットしたのち、その問題をしばらく寝かせることで新たなアイデアが"醸造"されるそうです。人の持っているコンテキストは常に変化し、その度に記憶の解釈は変わります。元々の情報源から記憶は切り離され、本当に忘れてしまったり、他の記憶と干渉することで、その人の個性とも言える新たな考え・発想が生まれます。 無理に全てを吸収しようとすると、情報源の個性は強く継承され、自身の考え・個性は弱まってしまいます。

2.2. 忘れることを恐れず、残ったものが人格を形成する。

本書では忘れることを肯定する言葉がたくさん記載されています。「忘れられるのは、さほど価値のない事柄である。」「ぼんやりと聞いていると大部分は忘れるが、本当に興味のあることは忘れない。」前項でも記載している通り、忘れることも個性により生まれ、また新たな個性に繋がるものと考えられます。 

2.3. セレンディピティ

有名な発明・発見にはセレンディピティ(無意識の発見)が関わることが少なくないと言われ、昔より様々な人がこれに関する言葉を残しているようです。。心理学者のスリオは「発明するためには、他のことを考えなければならない。」欧陽脩は「三上(枕上、厠上、馬上)がものを考えるために良い」といった内容の言葉を残しています。取り組んでんでいる問題を一時的に忘れ、何か別の簡単な作業中にぼんやりとすることで、アイデアは促されるようです。

2.4 注意点:話してしまうことを避ける

ロバート・グレイヴスというイギリスの詩人は、副業する際には文学と縁の深い職業は控えるべきであるとして詩人へ忠告していたようです。これは創作へのエネルギーは代償行動で肩代わりされやすく、何らかの形でアウトプット(話す・書くなど)することで頭の内圧が下り、考え続ける意欲を削いでしまうからです。世に一般的に言われることで「何かをするときは予め公言する方がいい」というノウハウは良く聞きますが、私も人に話すことでスッキリしてしまい最終的に失敗に終わる経験が何度もあります。逆に公言しないことで、自身の中で悶々とすることになりますが、結果として成功に終わることが多かったように感じます。



色々な考えはあるかと思いますが、私としてはこの書籍の通り、忘れる事を許容しながら学習を進めていこうと考えています。過去に、どれだけ復習を繰り返しても特定の事柄が記憶に定着しない経験をしたり、年々記憶力が低下している事を実感しています。逃げではありますが「全てを覚えなくてもいい」という方針は非常に魅力的なもので、しばらくこの方針に従ってインプットに取り組んでいこうと考えています。