サービスを長く使ってもらうための仕組み
利用者に長く製品・サービスを使ってもらうためには、どのような工夫をすべきか。一つのポイントとして"利用者を習慣化"させることが重要と言われています。
ここでは、幾つかの書籍を参考に、習慣化させる仕組みを紹介します。
習慣化とは
人は何気なく同じような行動をし続けています。例えば以下のような経験はないでしょうか。
人は有意識・無意識に関わらず同じ行動をとり、逆に行動しなければ不快感を感じることがあります、これが習慣です。もし自身のプロダクトが同様に習慣の一部となれば、ユーザーは自然と利用を続け、高い顧客生涯価値を生み出せるはずです。
ヒットするサービスは習慣化を利用している
SNSやソーシャルゲームなど、つい開いてしまうサービスに心当たりはありませんか。実際に、世の中のヒットしているサービスには習慣化を促す仕組みが組み込まれています。
この後説明するポイントを、既存サービスに照らし合わせながら読んでみてください。
習慣化に向けた3つのポイント
では習慣化のために必要な仕組みとは何でしょうか。重要なポイントとして、以下3つを紹介します。
- 利用サイクルを回す
- 報酬(動機付け)の管理
- 報酬を与えるタイミング
利用サイクルを回す
利用するきっかけがあり、自身で取り組む内容を計画し、実際に行動する。
結果として報酬が得られ、実績・経験が蓄積される。
この利用サイクルを簡単かつ多く回すことで習慣化が進みます。
利用者の目線でソーシャルゲームを例に挙げましょう。
- きっかけ:フレンドから呼び出しを受けてアプリを起動する。
- 目標選択:過去の経験から創意工夫し、自身がクリアできそうな難易度を選択。
- 行動:不要なストレスが削られたゲームに挑戦。
- 報酬:ゲームをクリアし、ゲーム内ポイントやフレンドからの承認を得る。
- 投資:今までのプレイ時間やフレンドとの関係性などゲーム内の資産が拡大。
行動分析学における"オペランド条件付け"にもある通り、人は自身で行動選択し、直後の環境変化(報酬)によって、その後自発的な行動が増えることがわかっています。
オペラント条件づけ - Wikipedia
上記の利用サイクルはこれを現実的に具体化したものと考えることができます。
報酬(動機付け)の管理
利用者はサービスを使っていく過程で成長しサービスに適応します。その時々で利用者がやる気を感じる報酬は変化します。初心者のうちは外発的動機づけ(金銭やポイント)が効果的にやる気を高めます。利用者が成熟するにつれ内発的動機づけ(成長の実感、利用者のつながり)が利用者を強く動機付けるようになり、利用サイクルを回す原動力となります。
アメリカの心理学者エドワード・L・デシが提唱する自己決定理論では以下とされています。
内発的動機付けは自律感(人に統制されず自身で行動選択)熟達感(努力を伴う挑戦とその成功に夜満足感)関係性(周囲の人とポジティブな関係性を持つ)からなっており、外発的動機(強制や懲罰、金銭、評価)よりも、持続性や創造性の観点で優れている。
しかしながら、サービス利用開始時点など内発的動機付けが利用しにくい場合もあり、外発的動機づけと使い分けをすることで、更に動機付け効果を高めることが可能です。
報酬を与えるタイミング
これまで報酬の種別を紹介してきましたが、これら報酬の与え方によって動機づけの強さは変化します。ここでは”連続強化”、”固定間隔”、”変動比率”の三つについて説明します。
連続強化
行動の都度、報酬を提供する方法です。ログインする度にポイントを付与するなどはこれに当たります。初期の効果は高いが、継続するに連れて効果が薄れていく特徴があり、サービスの利用開始時に利用者を定着させるために適しています。
固定間隔
一定の行動数で報酬を提供する方法です。ポイントカードなどがこれに当たります。報酬が得られる目標回数に近づくにつれ、利用者のやる気が高まる特徴があります。ただし目標回数が遠いほど効果は薄れるため、利用開始時は目標回数を少なめに設定するなどが実施されています。
変動比率
ランダムに報酬を提供する方法です。いわゆる"ガチャ"やギャンブルなどがこれに当たります。動機づけの効果が高い上、報酬が得られなくても効果が長く続きます。サービスを長期的に定着させるために適しています。
まとめ
以上が利用者を習慣付け、プロダクトの継続率を高めるための重要なポイントになります。実際には更に利用者を細かく分析し、様々な形の報酬を提供する仕組みが作り込まれているようです。
参考にさせて頂いた書籍は以下に記載していますので、詳細を確認したい場合は一読をお勧めします。
参考書籍
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