mikemoke blog

ビジネスに関心があるデータサイエンティスト。データ解析・ビジネス・エンジニアリングについての知見を纏めています。

壁にぶち当たってからのアイデアの出し方

背景・概要

仕事をしていると「課題を解決するためのアイデアが出てこない・・・」と頭を抱えた経験は誰しもあると思います。私も何度も経験し、無能っぷりを痛感してきました。

そこで、多数のアイデア発想法関連の文献を参考に、イデアをひねり出す思考プロセスを自分なりにまとめしました。それ以降はなんだかんだで、アイデアで困ることは無くなったと思います。

ここでは、そのプロセスを紹介して、少しでも皆さんがアイデアを出すためのヒントになればいいなと思います。

 

イデアをひねり出す思考プロセス?

「アイデアを出す方法」とwebを調べると、”ブレインストーミング”だとか”マンダラート”だとか、発想ツールやフレームワークが多いんですよね。

私も色々試してみましたが、いまいちハマらない。ブレインストーミングなんて良いアイデア出たことありませでした・・・

これは別にツール・フレームワークが悪いと言いたいのではなく、そもそもイデアを出す頭の使い方を知らなかったからだと考えています。うまく頭を使ってアイデアを出すまでのプロセスを事項から説明します。

1. アイデアを出しやすい頭の作りにする*1

論理的思考と創造的思考

子供の発想は独創的でイマジネーションに満ちています。芸術家ピカソは「私は子供達のように描けるのに一生かかった」と言ったそうです。

しかし成長の過程で、特に”論理的思考”を重視して教育される社会で、その想像力は失われていきます。論理的な思考は事実を重視し、想像は排除されるためです。

そこで、想像力を取り戻すため、子供のように考える”創造的思考”が重要となります。

創造的思考のポイント

創造的思考は論理的思考は対の関係にあるため、比較することで理解しやすくなります。ここでは特に重要な創造的思考のポイント3つを紹介します。

水平思考
  • 論理的思考では、答えにたどり着くために、モレ・ダブリを避けつつ、論理的に物事を深堀する垂直思考が求められます。
  • 創造的思考では、モレ・ダブリを気にせず深堀もしません。物事・アイデアから、連想し続け、イデアの幅をどんどん広げていく水平思考が求められます。
柔らかい思考
  • 創造的思考では、細かいことは気にしません。「いい感じ」「気持ちいい」など、頭と感覚で考える柔らかい思考が求められます。
大人と子供
  • 論理的思考では、大人のように事実・データに基づいて、綿密かつ確実に分析し、物事を進めます。
  • 創造的思考では、子供のように社会・常識に関係なく遊び心を大事にし、可能性があれば突き進みます。

創造的思考の衝撃

「世の中は論理的であるか否か、そして論理的ではない場合は無能」と思い込んできた私にとって、想像的思考という存在に衝撃を受けた記憶があります。

一方で、創造的思考のポイントはブレインストーミングなど普及した方法論と関連する部分があり、納得感はありました。

最初は抵抗感がありましたが、アイデアを出すときは論理的思考を忘れ、前項のポイントを抑えて創造的思考を働かせるようにしています。

 
ここまでで、アイデアを出すための基礎ができました。次は実際にアイデアを出すための方法です。

2. 積極的に“上の空”になって考える*2

「何言ってんだこいつ」 そう思われた方、気持ちはわかります。
しかし、"上の空"の状態というのは、実は創造的思考に重要な働きをします。

"上の空"の状態とは

ある作業をしている時に、いつの間にか無意識で作業をしつつ、無関係のことを考えていることを"上の空"と言います。例えば、高速道路を長時間走っていると無意識で運転してしまう漫然運転も、上の空です。

"上の空"の状態は創造性が高まる

人間は意識的に考えるとき、前頭前皮質が働いています。一方で無意識の状態が発生するとき、大脳基底核が働き、このとき創造性が高まるそうです。

研究からも"上の空"と創造性の関連性について分析されています。
『カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究チームは、頻繁に上の空になる人は創造性があって問題解決にも長けている。ということを明らかにしました。…創造性が飛び抜けて豊かな人は、意識的に上の空の状態に入ったり、その状態から抜け出たりする能力を持っていることが多い』
*3*4

 

歴史上人物の逸話

無意識から偶然に発見が起きることをセレンディピティとも呼ばれ、歴史上の有名な逸話がゴロゴロ転がっています。*5

  • イギリスの数学者 ウィリアム・ローワン・ハミルトン卿はダブリンでぶらぶらしている間に数学の発見をした。

また、中国の政治家 欧陽脩は"良いアイデアが出るのは三上(乗り物の中、布団の中、便所の中)である"
としています。
イデアが降りてくるのは、机上で集中している時ではなく、リラックスしている状態であると、昔から認識されているようですね。

意識的に"上の空"状態になるには

実は人は日常のなんでもない行動中でも30%の時間は上の空となっており、高速道路運転など行動内容次第で70%になることもあるそうです。意識的に上の空になりやすい行動をとることで、創造性を高めることが可能です。

リラックスや気分転換をしている時、上の空・無意識の状態は現れます。机に向かうのをやめて、休憩する、散歩する、コーヒーを飲む、友人と雑談する、などなど

 
次に、"上の空"の状態でアイデアを考えるために準備することを説明します。

3. あらかじめ課題を頭に詰め込む*6

しかし単に上の空になったとしてもアイデアは降りてきません。上の空となっている状態で、問題意識が頭に残っている必要があります。

そのためにも、まずは問題をしっかり考え悩むことで、問題を前頭前皮質に刷り込みます。そうすることで、上の空状態になり大脳基底核前頭前皮質とおき代わった時にも問題を考えることができます。

私の場合、仕事でアイデアに煮詰まった時、会社のソファーでコーヒーブレイクをとります。それでもダメな時は、家に帰って1時間ほどジョギングします。この間、頭の中は取り留めのないことが多数よぎり、時に問題をぼんやり考え、そうするとじきにアイデアが降りてくることが多かったです。


4. アイデアをすくい上げる

ここまでがアイデアを思いつくための一連のプロセスでした。しかしながら、まだ一つ問題があります。それは、イデアがすぐ意識からこぼれてしまうことです。無意識のうちに考えているためか、少しでも油断すると忘れてしまいます。

問題の解法が思い浮かんだものの忘れてしまい、後に解法が発表されたタイミングで思い出し、(それ考えてたやつ・・・!)と悔しい思いをしたことが何度かあります。

歴史上の偉人がメモを取る話はよく耳にします。アインシュタインも、常にメモとペンを持ち歩き、どのような状況においてもメモを取っていたそうです。
今は幸い携帯電話がありますので、メモをとる分には困らないですね。

 

まとめ

イデアが思いつかず壁にぶち当たることも含めて、思考プロセスをまとめると以下のようになります。

[アイデアを出すための頭を作る]->[アイデアを考える]->思いつかない->[問題を頭に刷り込む]->[上の空になる]->[すくい上げる]->(繰り返す)

個人にあった方法がそれぞれあると思いますので、自分流の"上の空"に切り替える方法を模索してみてください。
またこの思考プロセスは、ブレインストーミングなどのアイデアツール・フレームワークと併用することも勿論可能です。
みなさんが少しでも良いアイデアを出すヒントになれば幸いです。


参考文献

クリエイティブ・シンキング―創造的発想力を鍛える20のツールとヒント

クリエイティブ・シンキング―創造的発想力を鍛える20のツールとヒント

"アイデアを出しやすい頭の作りにする"の章の参考文献。論理的思考(ロジカルシンキング)と対局に創造的思考(クリエイティブシンキング)があることを、多数のポイントにより体型的にまとめられた書籍。また、発想ツール・フレームワークも合わせて紹介されており、アイデアを生み出すためのエッセンスがまとまっていると思う。

説得とヤル気の科学 ―最新心理学研究が解き明かす「その気にさせる」メカニズム

説得とヤル気の科学 ―最新心理学研究が解き明かす「その気にさせる」メカニズム

"積極的に上の空になって考える"、"あらかじめ課題を頭に詰め込む"の章の参考文献。書籍自体は人の行動を社会心理学で分析し、コントロールするための方法論がまとまっている。理論的な背景や研究など、ある程度記載・引用されているので、信頼できる。

ものの見方、考え方 (PHP文庫)

ものの見方、考え方 (PHP文庫)

"歴史上人物の逸話"で引用したセレンディピティの実例が記載されている。著者は他に思考の整理学 (ちくま文庫)乱読のセレンディピティ (扶桑社文庫)などベストセラー書籍を生み出しており、本の読み方、知識のまとめ方などが学べる。

*1:参考:クリエイティブシンキング

*2:参考:説得とやる気の科学

*3:参考:説得とやる気の科学:心ここにあらず

*4:参考:Experience sampiling during fMRI reveals default network and executive system contributions to mind wandering.

*5:参考:ものの見方、考え方

*6:参考:説得とやる気の科学