mikemoke blog

ビジネスに関心があるデータ解析系さらりーまん。データ解析・ビジネス・エンジニアリングについての知見を纏めています。

ソーシャルゲームが人を惹きつける理屈を分析してみた

私の友人の一人はソーシャルゲーム(以下ソシャゲ)にどっぷりはまっています。本人は時に「時間の無駄だからやめたい・・・」なんてことを言うのですが、しばらくするとソシャゲ再開して再び「やめたい・・・」と口にします。

生活に支障が出ればそれは依存症なので病院を勧めたいところですが、一方でそれだけ人を惹きつけるのは何故か気になっていました。

小さな画面・シンプルに見えるゲーム・”スタミナ”等のプレイ回数上限、とても楽しそうには見えませんでしたが、そこには”習慣化”により人を惹きつける(悪く言うと依存させる)仕組みが詰まっているようです。ここではその仕組みについて分析してみます。

習慣化とは

人は様々な習慣を持っています。朝起きたら顔を洗う、家に帰ればテレビをつける、暇になれば携帯を見るなど。習慣は無意識に自然と取ってしまう行動で、寧ろしなければ不快にすら感じるようなものです。

ヒットするサービスは、人の習慣に溶け込み、自然と利用させる仕組が組み込まれています。習慣化の仕組みについては、以前にまとめていますのでそちらを参考にしてください。

mikemoke.hatenablog.com

分析対象とするソシャゲ

習慣化の仕組みの観点では、正直どんなソシャゲも同様の仕組みを持っていると考えています。明確に分析対象とするソシャゲは指定しませんので、適当にご存知のソシャゲをイメージしつつ読み進めてもらえれば幸いです。


プレイサイクルの分析

利用者が沢山・早く、プレイサイクル(きっかけ・目標設定・実行・報酬・投資)を回すことで、このサイクルが利用者の習慣として定着します。ここではサイクルの各要素について見ていきます。

 

きっかけ

ソーシャルゲームを最初に始めるきっかけは、広告や友人からの招待などがあります。特にソシャゲは積極的にきっかけを生むシステムを含んでおり、友人からの呼び出し、友人からのスタミナ(プレイ回数加算)の提供、イベント通知、など様々です。毎日必ずきっかけが提供されるようになっています。

目標設定

プレイヤーは自分のレベルにあわせて、挑戦する課題を選ぶことができます。

初期は無理なくこなせる課題が提示され、レベルが上がるにつれ難易度の高く成功率が低い課題を選択できるようになります。

実行

課題(ゲーム)に挑戦します。ここは単純にゲームとして面白いかどうか、プレイヤーが楽しめることが重要です。

初期はストレスなく簡単にクリアできますが、プレイヤーのレベルが上がるにつれクリアは難しくなり、ストレスを伴うようになります。

報酬

ゲームをクリアすると経験値やポイント、新しいキャラクターなどが手に入り、フレンドからの評価や、ランキングの順位アップなども発生します。
また、ゲームにログインするだけでもログインボーナスが発生します。

投資

溜まったポイントでレベルアップしたり、ガチャを回してより強いキャラクターを手に入れることができます。

初期はレベルが上がりやすく、簡単に新しいキャラクターが手に入ります。しかしレベルが上がっていくにつれ、レベルは上がりにくくなり、新しいキャラクターも手に入りにくくなっていきます。



以上でプレイサイクルを分析しました。各項それぞれが作り込まれており、初期は簡単・早くプレイサイクルを回せるようにしてあり、初心者が習慣化しやすくしています。

一方で高レベルユーザーはサイクルを回しにくくなっていますが、これにも理由があり、次項で説明します。

報酬の管理

レベルが上がるにつれ、ゲームは難しくなり、報酬を手に入れづらくなります。これは、利用者のやる気を「外発的動機づけ」から「内発的動機づけ」に切り替えるための仕組によるものです。

「外発的動機づけ」から「内発的動機づけ」に切り替える仕組み

ソシャゲでいう外発的動機づけは報酬(ポイント・経験値)、内発的動機づけは、自分の成長・フレンドとの関係・キャラクター収集にあたります。

報酬(外発的動機づけ)はすぐにやる気を感じることができますが、飽きやすいという問題があります。そのため、利用者が報酬に飽きてソシャゲを辞めてしまう前に、フレンドを増やし成長を実感させ、またキャラクター・実績の収集などから、やる気を感じるポイントを増やしているのです。

ゲームが難しくなるのは?

ゲームの難易度が高まるのは、利用者が成長させ、利用者に成長を実感させるための仕組みです。ゲームクリアし難くストレスがかかりますが、内発的動機づけで動いている人はその程度では辞めません。

 

報酬を与えるタイミング

ソシャゲでは報酬が様々なタイミングで提供されており、利用者のやる気が持続するように上手く調整されています。

固定間隔の報酬:

ログインボーナスなど、ポイントカードのように一定の要件をこなした時に報酬が得られるものは、固定間隔の報酬になります。溜まっていくにつれ徐々に報酬への期待値が高まっていくことで、報酬を与える前から長期にやる気を高めることができます。

変動間隔の報酬:

ガチャなど、報酬(レアなキャラクター)が手に入るかどうか、確率的に決まるようなものは変動間隔の報酬になります。パチンコなどのギャンブルが正にこれで、利用者のやる気を強力&長期に高めることができます。また報酬のタイミングで、派手な音楽・アニメーションを用いることで、利用者の依存度を高めるなどのテクニックもよく用いられています。


同じ報酬でも、与えるタイミング次第で、効果の強さ・持続時間が変わってきます。ソシャゲは多数の報酬を満遍なく用意することで、絶え間なくやる気を感じさせるようになっています。

究極の状態 コミットメントエスカレーション

ゲームがうまく利用者の習慣に溶け込み、ゲーム内でコミット(レベルを上げ、フレンドのネットワークが広げ、時間とお金をつぎ込むなどの投資)するにつれ、利用者はゲームを辞めづらくなります。そして、更にコミットを繰り返し、辞められなくなる連鎖に陥ります。

これをコミットメントエスカレーションと言い、サービスにとって利用者を釘付けにした最良の状態と考えることができます。

(一方で、これが原因となり40時間ゲームをした人が過労で死亡した、というケースも報告されているので注意は必要ですが。*1

まとめ

習慣化の観点でソシャゲを分析すると、綿密に利用者を依存させる仕組みが組み込まれていることがわかりました。私の見た限りでは、世の中のソシャゲはだいたい同じ仕組みで動いているので、もはや習慣化はデファクトスタンダードとなっているように感じます。

ソシャゲをヒットさせるためには、デザインとゲーム内容で差別化するのは勿論、習慣化の仕組みを用いることが必須であると考えます。


参考文献

Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール

Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール

  • 作者: ニール・イヤール,ライアン・フーバー,Hooked翻訳チーム,金山裕樹,高橋雄介,山田案稜,TNB編集部
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2014/05/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (3件) を見る
サービスを如何に習慣化させるのか、方法論が詳細に記載されているほか、具体的なアプローチについても記載されており、習慣化について一通り知ることができる。

*1:参考:Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール 5章インベストメント(投資)